私たち「農事組合法人せせらぎ」の作業拠点となっているのが、村上市の佐々木集落。何世代も故郷への愛着を守り、人と人との絆を大切に、つつましく、けれども誇り高く暮らしてきた土地柄です。
村上市といえば、江戸時代に世界で初めて孵化増殖に成功した三面川の鮭が名を知られていますが、佐々木集落を流れているのは、三面川に優るとも劣らない清流荒川。大朝日岳(標高1,870m)を源に、飯豊山地などからの支流を集めて日本海へ注ぐ一級河川で、国土交通省による水質調査で何度も日本一の評価を得ています。荒川の水は清冽にして豊か。鮎釣りは夏の風物詩にもなっています。ミネラルを豊富に含んだおいしい水は、荒川から直接、私たちの田んぼにも用水路で引き入れられています。用水路には鮎が棲み、田んぼに入ってくることもありますし、このあたりは区画整理がされていないため、よい土が守られています。
また、稲の登熟期にあたるお盆過ぎには、昼夜の気温差が10℃以上になります。この気温差の大きさが、甘くておいしい米が育つ、大事な条件のひとつ。さらには、朝日連峰から吹きおろす風が稲の間を通って病害虫を防ぎ、いもち病などにかかりにくくしてくれるおかげで、農薬を減らした水稲栽培が可能になっています。自然の力を借りた安全な米づくりのやり方は、私たちの生き方の信念であり、田んぼをとりまく多くの命を守ることにつながっています。
このままでは、高齢化と若者の離農で、将来の地域農業が消えてしまう。そんな危機感から、集落13戸で「農事組合法人せせらぎ」を設立したのは、平成19年のこと。平成21年にはJA岩船米生産対策協議会主催「平成20年度生産高品質食味米 優秀賞」を受賞。新潟県産米の中でもおいしいとされる岩船米、その中での優秀賞受賞は、大きな自信と励みになりました。以来、食の安全を考え、新しいプロジェクトに取り組み、ブランディングによる「侍米」販売をスタートさせるなど、米づくりを基幹に積極的な活動を進めています。「せせらぎ」の名称は、地域をうるおす清流荒川に由来しています。この組織が、未来永劫、美しく流れる清流のせせらぎのようであるように、との願いを込めました。
ミネラルを豊富に含んだおいしい水は、銘河荒川から直接、私たちの田んぼにも用水路で引き入れられています。
村上市の岩船地域で生産される米を「岩船米」といいます。岩船米コシヒカリは、魚沼米や佐渡米とともに、一般的な新潟県産コシヒカリとは別に扱われ、おいしい米と高い評価を得ています。岩船地域の佐々木集落の農家による、農事組合法人せせらぎが育てる「侍米」は、まさに岩船米の中の岩船米。米づくりに掛ける愛情はもちろんですが、①田んぼの詳細な土壌分析 ②堆肥を入れた土づくり ③有機質重視の肥料、適切な量の化学肥料 ④農薬を5割以上おさえた栽培、4つの工程に力を入れています。
消費者のみなさまに安心して食べていただけるよう、「260項目の残留農薬検査」「カドミウム検査」「放射能測定分析(セシウム134、セシウム137、ヨウ素131)検査」を、きちんと行っています。こうした検査のすべてで私たちの米は検出されませんでした。日本の米に非常に出やすいカドミウムについても、世界的基準である0.4ppmを、余裕をもった数値で、毎回の検査をクリアしています。
良質の水、肥沃な土壌、気候風土に加え、おいしい米をつくるためには、ひとの力が欠かせません。機械化が進み作業がラクになったとはいえ、手間ひまをかけるやり方の農業には、やはり多くの労力が必要です。私たちの組合では、組織体制をいかし、試算を明確に出して事業計画を立て、組合員に負担のかからない作業分担を行っています。必要なところには合理的な方法を取り入れながら、良質の米づくりを維持しています。